イエティを探す旅に出る(仮)

ブログ名と内容は一切関係ありません。主に音楽、政治、哲学、お酒の話をします。

家庭訪問にお邪魔します

生活保護の現場は思った以上にディープです。仕事を説明しようと思えば自分自身もっと勉強が必要ですが、今日は普段の生活でなかなか遭遇できない人たちを紹介しましょう。
なお、ところどころフェイクが入っています。究極の個人情報を扱う仕事ですからね。


Aさんの場合
4月3日、入庁3日目で初出張がありました。午前中は無難にこなし、午後から訪問したじいさんが曲者でした。
インターホンを押し、待つこと0.1秒。出迎えてくれたのは、猟銃でした。

「誰だてめえ、ぶっ殺すぞ!!」

驚きと恐怖で言葉を失う僕をよそに、同行した先輩Xさんは猟銃を持ったおじいさんに話しかけました。
「Aさんこんにちは。今日は新人を連れてきたよ。4月から新しい担当ね。」
「おお、Xさんか。来るなら来ると言ってくれ。」
...いや、もう帰りたい。じいさんファンキーすぎるでしょう。
話してみると割と面白い人で、若い頃の自慢話を延々と聞かされました。手元の猟銃が怖すぎてよく覚えていません。
この日、入庁後初めて実家に電話をしました。


Bさんの場合
5月に入り、一人で家庭訪問をするようになりました。今日は30歳くらいのバツイチ女性からスタートです。この方すでに子どもが成人して働き始め、一人暮らしでした。
生活保護の二本柱は「最低生活の保障」「自立更生の助長」です。若く子どももいない方ですから、当然自立を目指して働くよう提案していきます。
「Bさん、しばらく外で働いていないようですが、働くことに興味はないですか?一日中家にいるのも気が滅入るでしょう。」
「...ジミーさん、あなたもそうやって私に冷たくするんですね。」
彼女はおもむろにキッチンへ歩き出すと、包丁を自分の喉元に向け喚きました。
「私は辛いの!あんたも結局私が邪魔だから、早くどっか行けばいいと思ってるんでしょ!死んでやる!死んでやる!!」
正直なんとも思わない。こちとら先月は猟銃向けられているんでい。
「Bさん、僕はあなたが邪魔だなんて思っていませんよ。よければこれまでのことを話していただけますか。」
彼女はしばらく包丁を自分に向けたまま話し続けました。できちゃった婚、結婚後のDV、配偶者の浮気、離婚、子との確執、生活保護受給がばれた時の近所の反応などなど。
いつの間にか包丁は流しに置かれていました。
「話してくれてありがとうございます。私の前任とは馬が合わなかったことは聞いています。今後は悩んでいることはすぐに相談してくださいよ。僕も近くを訪問した時はお邪魔させてもらいますから。」
おかげさまでBさんは僕が何をするでもないうちに仕事を見つけ、現在の保護費が毎月5,000円ほどです。もう少し頑張れば保護から自立できます。めでたしめでたし。


今日は猟銃と包丁の話をしました。今後はどんな凶器が飛び出すやら。

正直、家庭訪問は楽なもんです。僕の担当している世帯のうち6,7割は老人で、話し相手のいない彼らはお菓子と飲み物をたくさん準備して待っていてくれます(倫理規定があるためそこまでたくさんはいただけませんが)。
保護費の支給は毎月神経をすり減らします。多ければ不正受給、少なければ国民の権利を害します。

他にもたくさんの仕事がありますが、今回はこの辺で。
最近本読めてないな。哲学の記事とかも書きたいけど時間がない!